第5回

自分の音楽を客観的に聴くことは、とても難しいことです。
自分の作った曲を何回も歌って、演奏して、聴いていると、客観的なお客さんの耳で聴くことができなくなります。

アーティストは、新しい曲ができると、その最新曲が常に「最高傑作だ!」と思い込む傾向があります。

もちろんそれは悪いことではありません。しかしお客さんにとっては必ずしも「最新曲=最高の曲」ではありません。

大好きなベテランアーティストのコンサートによく行きます。
過去の大ヒット曲、名曲を生で聴きたいと思ってワクワクしながらコンサート会場に足を運びます。
しかし、大好きなヒット曲は演奏してくれなくて、不完全燃焼で、家路についた経験が何度もあります。

ニューアルバムのプロモーションのためにコンサートをしているので、新曲中心のセットリストになったのでしょう。
また何十年も同じ曲を演奏してきたので、もう飽きてしまってどうしても新鮮な新しい曲を演奏するほうが楽しい、という理由もあるでしょう。
先の述べたように、新曲が最高傑作だ!という気持ちもあるでしょう。

すでにファンになっているアーティストであっても、このような「ズレ」が生じることがあるのです。

これからファンを増やそうというアーティストの場合は、リスナーとの間に、もっと大きなズレが生じているのです。


自分の音楽を客観的に聴く方法

<その1>プロのCDと自分の音源を並べて聴く

よくアマチュアに見かけるのは、自分はアマチュアだから、お金をかけて作ったプロのCDよりは劣っているのは当然だメジャーと契約してプロ仕様のレコーディングをすれば、プロと同じ作品を作れるはずだ、という考えです。

たしかにプロのCDはプロのスタッフがたくさんのお金をかけて作っている場合が多いです。(そうでない場合もありますが)

しかし、お客さんからすれば、いくらお金をかけようが、どんなスタッフが関わっていようが、どうでもいいこです。お客さんは「音楽」にしか興味がありません。

プロだろうがアマだろうが、お客さんが払うのは同じ「お金」です。

ここでポイントは、
音質ではなく、「音楽」の質を比べる
ということです。

高価なレコーディング機材を使った作品と自宅録音で作った作品では音質に大きな差が出るのは当然です。最近はデジタルレコーディング機器が安く揃うので、差はかなり縮まりましたが、それでも自宅録音やアマチュア向けのレコーディングスタジオで録音した作品とは差があります。

音質については、残念ながら、プロのCDに敵わないでしょう。そこで勝負するべきではないと思います。
(宅録でも、きちんと作ればプロ並の音質も可能ですが、そこに労力をかけるのは懸命ではありません)

しかし、あなたが演奏する「音楽」には、お金は関係ありません。
音質はお金を払えば手に入れられますが、あなたの才能、センス、技術はお金では買えないからです。

よくすごく音がいいのに、肝心の音楽がイマイチというアマチュアの作品に出会います。
ミュージシャンやオーディオマニアは別にして、あなたが心を掴もうとしている一般のお客さんは、音質にはそれほど拘らない、いや、ほとんど気にしていません。

自分の音楽を客観的に知るために、ぜひできるだけたくさんのプロのCDと並べて聴いてみましょう。

そして「音楽」的に優れている部分、劣っている部分を分析してみてください。

プロのCDにも色々あります。
実力のある一流プロとデビューしたての新人では、同じプロでもその「音楽」は(どちらが優れているかは別にして)全く異なるかもしれません。

それらのCDと、サウンド、音程、リズム、表現、楽曲などを一つ一つ何度も比べてみましょう。
この作業を繰り返し行っていると、だんだんと自分の「位置」が分かってくるはずです。
だまされたと思ってぜひ試してみてください。

プロになれば素晴らしい音楽が作れるようになる

のではなく、

素晴らしい音楽を作れるからプロになれるのです。

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